技能実習制度に関する疑問、よくあるQ&A
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そもそも技能実習制度ってなに?
技能実習制度とは、外国人の方々を日本の会社や個人事業者などで受け入れ、実習を通じて日本の技術や知識を習得し、本国に帰国した際にその地域の経済発展に寄与することを目的とした制度です。
技能実習生が日本で実習を行う際は、各種法令や制度の適用を受けるため、技能実習生本人だけではなく、実習実施機関(技能実習生を受け入れる会社など)もこれらを熟知し遵守する必要がございます。
この制度は、本来労働者不足の解消といった目的の制度ではございません。
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
(基本理念)
第三条 技能実習は、技能等の適正な修得、習熟又は熟達(以下「修得等」という。)のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。
2 技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない。ですが労働者不足を補うといった日本側の需要に対して、日本で働いて貯金がしたいといった外国側の供給、これらが合致することから技能実習制度は労働者供給のための制度である、と認識されていることは否めません。このような本音と建前が混在していることが、問題視されることがございます。
このようなことを踏まえ、技能実習制度は年々厳格になってきており、技能実習法なども改正されることが多く見られます。といっても、現実的にはもともと存在している労働基準法の厳格な適用であったり、技能実習生をできる限り日本人と同等に扱うなど、あたり前のことをあたり前に運用されるようになったにすぎません。
このような話だけを聞くと、技能実習生を受け入れる際に、様々な懸念があるかと思います。ですが実際は監理団体と呼ばれる団体(協同組合など)を通じて技能実習生の受け入れを行い、様々なサポートを受けることができるため、制度運用に対する負担はかなり軽減されています。
山奥に住む70代ご夫婦が、自身の畜産業の中で技能実習生を受け入れている、このようなことも一般的にございます。制度自体は厳格ですが、監理団体のサポートのもと技能実習生を日本人と同じように扱うことを心がけ、普通に日本人を雇用するのと同じように考えれば、基本的に問題ございません。
ごく一部の特殊な問題のみ取り上げられることが多いですが、実際は「技能実習生を受け入れてよかった」「日本に技能実習に行ってよかった、また日本に行きたい」このような話が大半を締めています。少子高齢化が進む日本国内では、今後外国人とどのように接していくかが非常に重要となります。技能実習制度はその第一歩として非常に重要や役割を持った制度です。
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技能実習生を受け入れるために、必要なことは?
技能実習生は、直接外国とやり取りして受け入れることはできません。技能実習生を受け入れる場合、必ず「監理団体」と呼ばれる機関に依頼して監理団体経由で受け入れる必要がございます。
監理団体とは非営利法人である、商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人又は公益財団法人など様々な団体が考えられますが、通常一般的には協同組合と呼ばれる中小企業団体を経由することがほとんどです。これら団体に、技能実習生を受け入れたいとご相談いただくことで、技能実習生を受け入れる事が可能となります。
技能実習生を受け入れる際は、外国の現地へ赴き面接を行う、或いはオンラインによる面接を行い選抜する流れとなります。面接合格者は、日本入国前に日本語などの学習を行うのですが、それと同時に技能実習生を受け入れる方々は手続きや準備が必要です。技能実習生が寝泊まりする寄宿舎の準備であったり、業務や生活を指導する人員の配置など準備することは様々なのですが、実際は協同組合等の監理団体がサポート・指導してくれますので非常に安心です。通常であれば7ヶ月〜9ヶ月程度で面接合格者の様々な手続きが終わり、実習生が配属されます。
なお技能実習生を受け入れる際、受け入れている期間中には費用がかかります。技能実習生が入国した時点で、30万円程度、受け入れている期間中は毎月3万円〜5万円程度が必要です。その他、技能実習生が日本に滞在するために必要な制度上の費用なども負担する必要がございます。これら金額は監理団体によって異なりますが、技能実習生に支払う給料などとは別に必要であるため、技能実習生を受け入れる際は費用の面もよく検討しておく必要がございます。
以上は制度上や手続きなどについてですが、これらは監理団体を通じて行うためそれほど問題とはなりません。これに対し、技能実習生を受け入れる際に最も必要なことは、技能実習生を日本人と同じように扱うことです。外国人だから、日本語がへただから、文化が違うからなどの考え方や言動は、すべて技能実習生に伝わります。このような状況下では、技能実習生本人も頑張る気力を失い、人によっては反抗的な態度が表面化したりと、決して好ましい状況にはなりません。
日本入国時点でやる気がない技能実習生などほとんどいません。人間ですので個々の能力や性格に違いはありますが、すべての技能実習生が頑張る気力を失う理由のほとんどは、技能実習生を受け入れる側に問題があることが多いです。この点をよく理解しておく必要があります。技能実習生とより良い関係を築くことができるのであれば、双方にとってより良い環境となり、これまでなかった様々な恩恵がもたらされることは間違いありません。
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監理団体って何?協同組合って何?
技能実習生を受け入れる場合、必ず監理団体を経由して受け入れる必要がございます。監理団体とは、技能実習生を受け入れる方々や技能実習生本人に対して様々なサポートを行い、正しく技能実習が行われているかをチェックするなどの機関です。技能実習を監理する団体。これを監理団体と呼びます。
監理団体については制度上公益性が求められるため、営利法人である株式会社などは監理団体として認められず、商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人又は公益財団法人などの非営利法人である必要がございます。
監理団体は、必要な要件を満たした上で主務大臣より許可を受けることで技能実習監理業務を行うことが可能となります。ですが、実際に監理団体として活動している団体はその殆どが協同組合(中小企業団体)であるため、監理団体=協同組合と考えても特に問題ないと思います。
監理団体には、主務大臣から一般許可を受けた「一般監理団体」と、特定許可を受けた「特定監理団体」の2種類がございます。特定監理団体で技能実習生を受け入れた場合、技能実習は通常3年で終了いたします。これに対し一般監理団体で技能実習生を受け入れた場合、一定の要件を満たすことで2年追加することができ、最大5年の技能実習を行うことが可能となります。このため、特定監理団体で技能実習生を受け入れている方々が技能実習を2年追加したいのであれば、加入している監理団体に一般許可を取得してもらうか、別の一般監理団体に入り直す必要があります。
技能実習生を受け入れるためには様々な費用が発生いたします。これら費用は、技能実習生を受け入れている方々から監理団体に支払われます。このため技能実習生を受け入れている方々の中には、監理団体にお金を払っているんだから自分たちはお客様だ、などの誤解をされている方々がかなり多く見られます。
また監理団体側も費用を徴収していることにより、技能実習生を受け入れている方々からの要望にはできる限り応えなければならないといった力関係が生じております。よって技能実習生を受け入れている方々がなんでもかんでも監理団体にお願いするといった状況が生じており、同時に技能実習生を受け入れている方々は制度すら理解する必要がない、といった原因となっております。
監理団体にとって技能実習生を受け入れている方々はお客様ではなく、サポート関係にあるといった事を念頭に置き、日常の諸問題や業務上の問題など、双方が協力して技能実習生をサポートすることで、それが技能実習生本人にも伝わり、やる気や技術の向上などに繋がります。
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団体監理型・企業単独型の違いは?
技能実習生を受け入れる場合、2つの方法がございます。
1つ目は団体監理型と呼ばれる受け入れ方法です。
監理団体と呼ばれる団体に加入し、監理団体経由で技能実習生を受け入れる方法です。団体から監理を受けつつ技能実習生を受け入れる方法、これが団体監理型です。技能実習生を受け入れる際、大多数はこの方法による受け入れとなります。団体監理型のメリット
技能実習制度は、非常に複雑な制度です。日常業務やビザの維持管理などその業務量は多岐にわたります。これらを個人で行うことは、その煩雑さや膨大量などの面から通常困難と言わざるを得ません。このような複雑な制度ですが、団体監理型であれば、その殆どの部分で監理団体によるサポートが行われるため、制度によるストレスを受けることなく技能実習に集中することが可能となっております。団体監理型のデメリット
団体監理型により技能実習生を受け入れる際のデメリットは、監理団体に対する費用の支払いです。技能実習生を受け入れている期間中、毎月1名あたり3万円〜5万円程度の監理費用が必要です。これら費用は技能実習生に対する給料以外に必要な費用となるため、この費用負担がデメリットと言えます。2つ目は企業単独型と呼ばれる受け入れ方法です。
上記団体監理型が監理団体などを通じて技能実習生を受け入れるのに対し、企業単独型はその企業自身が技能実習生を受け入れる方法です。ですが現実的にはいくつかの要件を満たしていることが必要です。もっとも、企業単独型で技能実習生を受け入れる場合、外国にある自身の支店・子会社、取引先などから受け入れることが必要ですが、実際には敷居が高く設定されております。よって通常は団体監理型による技能実習生受け入れといった手段を用いることが一般的です。企業単独型のメリット
監理団体を経由しないため、全て自社内で技能実習生の受け入れが可能。毎月の監理費用等も必要がないため経費面でも削減が可能です。企業単独型のデメリット
膨大な手続きや技能実習生のサポート、ビザの維持管理、通訳などの確保など様々な事務が発生いたします。このため、企業単独型で技能実習生を受け入れることができる企業であっても、団体監理型を選択することがほとんどです。技能実習生を受け入れる際は、団体監理型・企業単独型の2種類があるとご紹介いたしました。現実的に企業単独型は敷居が高いため、初めて技能実習生を受け入れる場合、まずは団体監理型によって受け入れを行い、3年ほど技能実習を行ってみた後、自社内で対応が可能なのであれば次回からは企業単独型で受け入れるといった方法を検討するほうが良いかもしれません。
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送り出し機関ってなに?
技能実習生を受け入れる際、協同組合などの監理団体と呼ばれる機関を経由して受け入れを行うことがほとんどです。
これに対しベトナム側では技能実習生候補者を募集し、日本入国前に教育を行う機関が存在します。また、技能実習生が日本入国後に監理団体と共に技能実習のサポートなども行います。この機関を「外国の送り出し機関」と呼びます。その他、取次機関や準備機関などの名称が使用されることもございますが、これらも総称して送り出し機関とされています。
外国から技能実習生を受け入れる際、その制度上送り出し機関経由で面接や受け入れを行うことが必要です。このため、送り出し機関がどのような会社であるかという点が非常に重要です。
技能実習生を受け入れる際「人材の質」という話をされる方がおられます。ですが面接候補者や技能実習生については、人材の質といった概念はあまり関係がありません。当然、各自人間ですので個々の能力差や性格の適合性などはございますが、一番重要な点は、人材の質ではなく送出機関の質です。送出機関がどのような会社であるか、これが技能実習生の考え方や意欲に影響いたします。
アジア圏の送り出し機関は、その国の方々が経営されている事が多く、送り出し機関の利益追求が運営の根本にあるといえます。それらの方々からすると、どのような状況であっても、どのような技能実習生であっても、日本に送れば利益となります。よって一見誠実なことを話しているように見えても、あらゆる虚偽・誇大広告などが当然の如く行われている現状がございます。日本向けの教育経験もない、日本人の考え方も理解しようとしない、儲かればそれでいい、このような送り出し機関は、残念ながら多いのが現状です。
送り出し機関として運営するためには、各国政府から認可を受ける必要がございます。これを一般的に送り出しライセンスと呼びます。
これを踏まえ、日本側の方々が送り出し機関だと思っている機関の中には、ライセンスを持った送り出し機関ではなく、ライセンスを「借りているだけの機関」が非常に多く含まれております。本社・支社の関係のようにも見えますが、制度上必要な書類の準備以外、業務内容は完全に独立しており、また自身が取得しているライセンスではないため、完全に利益のみを追求した機関であることがほとんどです。
窓口になっている方が日本語の上手なベトナム人である、大学を卒業している、講習施設などが異常なほど巨大である、いいことばかり言うなど、日本人はかねてからこのような点を信用する傾向がござます。よって送り出し機関を選定する際、表面的な部分には注意を払う必要がございます。
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技能実習生を受け入れることは難しいですか?
結論、責任は伴いますが、それほど難しくございません。
技能実習生を受け入れる際、制度内容や労働法規関連など必要な知識は膨大であることは事実です。ですが、技能実習生を受け入れる際は監理団体と呼ばれる団体経由で受け入れることが多く、これら煩雑な手続きなどについては、監理団体がサポートしてくれることが一般的です。よって技能実習生を受け入れる場合は、技能実習生との人間関係や日常の技能実習などを重点的に考えればよく、それほど難しく考える必要はありません。事実、ご70代の高齢の方々が技能実習生を受け入れている、などのケースもごく一般的にございます。
もっとも、すべてを監理団体任せにするのではなく、最低限の制度などは理解しておく必要があり、外国人を受け入れているという意識及び責任は伴います。これらは、日本人労働者を雇用している状況と同様です。
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技能実習生の失踪が心配
技能実習生を受け入れる際、一番懸念されている点が「失踪」ではないでしょうか。
このような話を申し上げますと、悪い意味に取られるかもしれませんが、結論から申し上げますと、失踪はどのような状況であっても必ず起こりうることです。
当然、常日頃から技能実習生の状況及び環境などに気を配り、失踪の原因となる問題をできる限りなくすように対応を行うことは必要です。ですが技能実習生が人間である以上、性格や考え方は様々であり、また技能実習生を受け入れる方々も人間であるため、各種要因に基づき失踪を100%防ぐことは出来ません。
100%失踪はしません、という話があったとすればそれは虚偽である、或いはなにか見えない力で強制的に働かせているなどの問題が考えられます。
なお、日本では「失踪」といった言葉を用いているため非常に重大な局面のような印象を受けますが、現実的に失踪とは「退職」です。技能実習生には転職の自由がないため、退職する必要性に迫られた際は、失踪(退職)といった手段を取るほかございません。
令和3年、ベトナム人についての失踪人数は 4,772人とされています。これに対し、令和3年6月時点でののベトナム人技能実習生総数は 202,365人 です。
出入国管理庁統計
https://www.moj.go.jp/isa/content/001362001.pdfhttps://www.moj.go.jp/isa/content/001356650.pdfつまり令和3年度の技能実習生(この場合はベトナム)失踪率=退職率は、「2.3%」であることがわかります。
日本人を雇用した場合、1年以内の退職率は何%なのかと考えた場合、この「2.3%」といった数値が高いのか低いのか、この点は技能実習生を受け入れる方々の状況によって異なると思います。
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文化の違いが心配
技能実習生を受け入れる際、文化の違いについて懸念される方々がおられます。
確かに文化の違いから発生する諸問題はございます。ですが現実的に文化の違いが問題になることは、日本人を雇用する場合に比較するとそれほど多くはありません。
むしろ日本人を雇用する場合に起こりうる、若者と高齢者間での価値観の違い、学歴や性格などから発生する考え方の違いなども、ある意味文化の違いであり、より難しい問題であると考えられます。
これに対し外国人技能実習生は、日本入国当初は文化の違いがございますが、日本人の考え方や文化の違いを理解しようと日々務める傾向がございます。このため日本人を雇用することに比べて外国人技能実習生のほうが文化の違いがそれほど多くないといえます。